山とウサギ

お返事が遅くなりましてございますが、「クロユリの山でおでんを」にメッセージをくださりありがとうございました。

自分が直接訪れたり、興味を持って体験談を見たり聞いたりすることで、地理関係の知識の把握はずいぶんと異なってきますよね。

私はもともと地理の勉強は好きなほうで、日本地図も世界地図も見るの大好きで、学校教育を終えてからも、何度か自分で地図帳を買って手元に置いては、ふとしたときに取り出して眺めはするのですが、かといって国名や地名に詳しいかというと何故かそれは全然なくて、九州の県の配置をきちんとおぼえたのも、北陸の県の配置をおぼえたのも、実際に自分が住んでみてからのことです。いえ、おそらく学校でのテストのときにはいったんはおぼえたのでしょうけれど、その後その知識を使うことがなくて、旅行に行っても特定の県ひとつかふたつだけを訪れたのでは、なかなかその地域のすべての県の配置を把握する機会と必要がなかったようです。

山や河川に関しても、どこが何メートルだということも勉強したはずなのですが、未だにあまりどこがどこだかあまりよくわかっておらず、でも、自分が「川下り」をした川は一応名前と場所はわかる、というかんじです。

山は夫が登るようになってから、富士山、白山、立山、あたりの有名所はおぼえましたが、それ以外は私にはあんまりおぼえる必要がないようで、他に私が記憶している山といえば、大阪に住んでいた頃登った「金剛山(こんごうさん)」、小学校の校歌に登場した「野呂山(のろさん)」、島根県から見える「大山(だいせん)」、徳島在住時に近かった「眉山(びざん)」、熊本にいた頃よく行った「阿蘇山」、熊本の社宅のベランダからよく見えた「雲仙(うんぜん)」、くらいでしょうか。

他にも名前を見たり聞いたりすれば、ああ、そこ知ってる、行ったことある、というところはいろいろあるのでしょうけれど、脳みそのわりとそんなに表側ではないところにその知識はお片づけしてあるようです。

夫が登ったことのある山でもあり、夫が他の山に登った時にその遠景も見たことのある「赤兎山」という山があるのですが、夫はその山の形を指し示して「ほら、うさぎの背中みたいだろ。だから赤兎山なんだって」と教えてくれるのですけれど、私にはウサギの背中といわれればウサギなのかもしれないけれど、リスと言われればリスにも見えるし、ネズミやマウスやラットと言われればそうも見える、という形でして、まあ犬ではない、牛でもない、というのはわかるとはいうものの、という気がしてそのように申しましたところ、夫は「やはり山の名前としてはウサギでないと、リスやネズミじゃあ有難味に欠けるやろう」と力強く断言しました。

私はまだ自分で山に名前をつけたことがないのですが、もしもどこかで誰かから「お願いだから、この山に名前をつけてほしい」と頼まれることがあるときには(あるかな、なさそうだな)、そこに動物を持ちだしてくるなら、そしてその山の形がなんとなく緩やかに楕円の弧を描いているふうであるときには、リスやネズミではなくてウサギを思い出す、ということをこころに留めておこうと思います。