おおらかな才能

「原付の条件」に、拍手コメントをくださりありがとうございます。こんなにずいぶん前に書いた記事を読んでもらえることも、それに対して拍手やコメントをいただけることもあるのだなあ、と、うれしい気持ちです。

その後、上記記事中に登場した彼女が、きちんとサンダルを「履かずに」、安全に原付を運転しただろうか、と、気にかけてくださいましたが、きっと、間違いなく、「サンダル履きで」原付に乗っていただろうと思います。今度会えたときには、一応、確認してみましょうか。でも、彼女は、とてもおおらかな人ですから、そのへんについては、あまり深くこだわることなく、記憶もそれほど深くしていないものと思われます。

そういえば、先日、琵琶湖のほとりで彼女と会ったのですけれど、今も昔もそのおおらかさは変わることなく健在でした。彼女の夫が夕食のときにふと、「あ! 明日の朝に飲む薬を持ってくるのを忘れた。いつものかばんになら必ず予備の薬が入っているのになあ。今日はたまたま別のかばんにしたからなあ。うわあ、こまったなあ」と、血糖値の心配をし始めたとき、彼女が、「ええって。大丈夫やって。一回くらい飲めへんでも。それは、ちょっと、薬飲まんと様子見てみなさい、いうことやわ」と言うので、私は「なんともコンプライアンスにおおらかな薬剤師やなあ」と感心しました。彼女は、「だってな、これから家に取りに帰れるわけとちがうし、心配してもしゃあないやん。それに、薬自体は、先生からも、それだけうまいこと血糖値のコントロールできてるんやったら、もう無理に飲まんでもいいですよ、って言われてんねん」と説明してくれて、なるほどな、と納得しました。彼女の夫は、「そうなんですよ。週六日のフィットネスと食事内容の調整で、いつごろの時間帯に、何を食べて何をしたら、どれくらいの血糖値になる、いうのも、そこでどうしたらどれくらいの血糖値になる、いうのも、どういう症状が出たらどうしたらいい、いうのも、もう全部わかって、危なくない範囲でコントロールしてるんで、薬は止めてもいいいうて言われてるんやけど、一番軽いミリ数の少ないのでも、薬を飲んでるほうが、やっぱりなんや安心感があるんですわ」と続けて説明してくれました。糖尿病も、あそこまで上手に管理できれば、いうことないなあ、と思います。現在の彼女の夫は、疲れやすさなどの糖尿病独特の症状が出ることもなく、皮膚の張りや色艶もよく、糖尿病治療以前よりもずっとお元気に体調よく過ごされているように思います。

しかし、彼女の夫にしてみたら、たまに「これなら、糖尿病でも、安心して食べられる!」と気に入った食品に関して、彼女に「これ、また取り寄せしたいから、取り寄せ先、控えといて」と頼んだにもかかわらず、彼女が書きとめ忘れてそのまま包装を捨てることが何度かあり、そのためその食品と再会できなくなったことなどが、少々不満な様子でした。私が彼女の夫に、「それは、控えといて、と頼むのではなくて、自分で書きとめておくようにされないと。甘いですわ」と言うと、彼女の夫は、「でもな、頼んだときには、ちゃんと、わかったー、書いとくなー、いうて言うんですよ。わかったー、いうて言うたんやったら、そうしてくれると思うやないですか」と言いましたが、私が、びしりと、「わかったー、いうて言うても、相手は彼女ですやん。そんなん、わかったー、言うても、彼女の好きなように、そうしたりそうせんかったりするに決まってますやん」と話したところ、彼女は大笑いしながら「そうやんなー。ほんまにそうやわー」と豪語し、彼女の夫も「うーん、みそさん、さすがですなあ。ようわかってはりますなあ」と感心し、めでたく話が収まりました。

あの夫婦の、彼女のあの素直で豪胆なおおらかさと、彼女の夫の「きっちりさ」というか「ストイックさ」というか「自分が得したという実感や快感のためなら労力手間暇惜しまない投資力のような決断力や持続力」とが、折々にあいまって、生み出し奏でるハーモニーは、なんともいえず面白いなあ。