山頂携帯電話妖怪

山の上の郵便局」にコメントをくださりありがとうございます。

夫が書いて送ってきてくれた葉書に書いてあったのは、たった一行の文章というか時刻の記録でしたが、私が夫に葉書を送るとしたら、それはもう、表も裏も文章でびっしり埋め尽くすことだろうと思います。で、夫は、何もこんなにびっしり書かなくても、と思うんでしょうね。私が夫の葉書を見て、もうちょっと書いてくれたらいいのに、と思うのと同じように、方向性としては反対のベクトルで、等価のエネルギーで。

我が家は夫婦でソフトバンクの携帯電話を使っておりまして、家族間の通話とSMSは常時無料です。特別ソフトバンクのファンというわけではなく、ボーダフォンを好んで使っていたらいつの間にかソフトバンクになっていた、というのと、私の場合は関西デジタルホンで使い始めたのに、いつの間にかJ-PHONEになり、vodafoneになり、ソフトバンクになっていた、という、知らないうちに置屋の屋号が変わった芸者のような気分(芸者業に従事したことはないのですが)です。

それでとにかく、我が家は夫婦でソフトバンク携帯を利用しているのですけれど、そしてソフトバンクはたしかに電波が入らないエリアが多いのですが、それでもまあ、それなりに、連絡手段としては充分便利な状態を整えているつもりでおります。

それが先日夫がおもむろに「おれ、携帯電話をソフトバンク以外のところに変えようかなあ、と思うんだ」と言うので、「なぜなのか」と問いましたら、案の定、「山の上から、今頂上だよ、って、みそきちに電話もメールもできないから」と言うのです。

ちょっと待て、君はこれまでかつて、山のふもとからでも、どこからでも、私に「今どこにいるよ」「これから帰るよ」などと電話をかけてきたことがあったか、SMSを送ってきたことがあったか、よく考えてみよ、と言ったところ、しばらく、んん、と考えて、「あ、ほんとだ、したことないし、これからもたぶんせんなあ、別にソフトバンクのままでいいじゃん」と言っておりました。

山のてっぺんというところは、かように、人心を惑わすところなのかと、恐れおののく夏にございます。